自分のお口を鏡でみたとき「歯が長くなった気がする」「歯と歯のすき間が目立つようになった」と感じることはありませんか? もしかしたらその現象は『歯肉退縮(歯ぐき下がり)』が原因かもしれません。歯肉退縮は見た目の問題だけでなく、将来的に深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。
今回は、歯肉退縮によって起こりうるトラブルや原因、について解説していきましょう。
歯ぐき下がり(歯肉退縮)によって起こりうるトラブル
歯肉退縮とは何らかの原因で歯ぐきがすり減ったり、痩せたりして歯根(歯の根っこ)の一部が露出している状態のことをいいます。
初期の段階では無症状であることが多く、本人が気づかないまま進行してしまうことも少なくありません。
ただ、歯ぐきが下がった状態をそのまま放置すると、次のようなトラブルを引き起こすおそれがあるため注意が必要です。
●冷たいもの・熱いものがしみる(知覚過敏)
歯の根っこが露出すると、食べ物の刺激が直接歯の神経に伝わりやすくなるため、歯がしみたり痛みを感じたりすることがあります。
●歯の根元むし歯(根面う蝕)のリスクが高まる
歯ぐき下がりによってむき出しになった根っこの表面(根面)はエナメル質で覆われていないため、細菌による酸の影響をダイレクトに受けてしまいます。根面にできるむし歯は一般に「根面う蝕」と呼ばれ、中高年以降に多く発症し、進行が早いのが特徴です。
●見た目が悪くなる(審美的な問題)
歯ぐきが下がると以前よりも歯が長く見えたり、歯と歯のすき間が大きく目立ったりして口元の見た目が悪くなります。とくに、前歯の歯ぐき下がりは目立ちやすいため注意が必要です。
●歯周病が進行しやすい
歯ぐきが下がると歯と歯の間のすき間が広がり、そこに食べカスやプラークがたまりやすくなります。これにより、むし歯だけでなく歯周病の発症・悪化のリスクが高まります。
歯ぐきが下がってしまう7つの要因
歯肉退縮を起こす原因に、以下の7つが考えられます。
01誤ったブラッシング法(オーバーブラッシング)
硬い歯ブラシをゴシゴシ横に動かしたり、強い力で磨いたりすると、歯ぐきにダメージを与え歯肉退縮を起こすことがあります。また、1日に何度も歯を磨くのも要注意です。
02歯周病
歯周病が進行すると歯の周囲を支える骨が溶けてしまいます。これにともなって、歯ぐきも徐々に下がっていきます。
03歯並び・噛み合わせ
歯並びや噛み合わせの問題で一部の歯に過剰な力が加わると、その刺激によって歯肉退縮を引き起すことがあります。また、日常的に歯ぎしり・食いしばりをする方も歯ぐきが下がりやすい傾向があります。
04遺伝的な要因
生まれつき歯ぐきや歯を支える骨が薄い人は、歯肉退縮が起こりやすい傾向があります。このような人は、歯ぐきに少しの刺激が加わっただけでも歯ぐきが下がりやすいため注意が必要です。
05矯正治療
矯正治療では歯に一定の力をかけることから、その副作用として歯肉退縮を起こすことがあります。
06喫煙
喫煙習慣のある方は喫煙しない人に比べ、歯肉退縮を起こすリスクが高くなります。これはタバコに含まれる一酸化炭素やニコチンなどの成分が歯ぐきの血流を悪くし、栄養や酸素が十分に行き届かなくなるためです。
07加齢
コラーゲンを主成分とする歯ぐきは、皮膚と同じように年を重ねるごとに萎縮して下がっていきます。
ただし、加齢による歯肉退縮は軽度なものが多く、適切なブラッシングでケアをしっかり行えば進行を抑えることができます。
いかがでしたでしょうか。
次回は治療法、予防法などについて詳しく解説していきましょう。