“口腔ケア”はかつて「むし歯や歯周病を防ぐこと」が主な目的と思われてきました。しかし近年、その重要性はお口の健康だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼすことが明らかになっています。
歯周病が全身の病気と関連していることは以前から知られていましたが、最近の研究ではお口の環境が「腸」とも密接に関わることがわかっています。
“今回は、新たな見解をふまえながら、口腔環境と腸の関係についてご紹介しましょう。
お口と腸はつながっている!
私たちが食べ物を食べたり、飲み物を飲みこんだりするたびに、お口の中の細菌も一緒に胃や腸に流れ込んでいます。
お口が健康であればさほど問題はありませんが、歯周病が進行していると状況は大きく変わります。
歯周病菌が腸のバリア機能に関与
近年の研究で、歯周病菌の1つ「ジンジバリス菌」が腸に届くと腸内の細菌のバランスが崩れ、重要なバリア機能を低下させることが明らかになりました。
腸には本来、有害なものが体内に入り込まないようにする”バリア機能”が備わっています。
しかし、ジンジバリス菌によって腸内細菌のバランスが崩れると、そのバリア機能が弱まって有害物質が体内に侵入しやすくなります。これが全身に広がると、体のあちこちで炎症を引きおこす可能性が高まるのです。
腸内環境の乱れがもたらす全身への影響
歯周病が糖尿病や心臓病、脳卒中など様々な病気の発症や悪化に関係していることは、ここ数十年で広く知られるようになりました。
しかし、歯周病がどのような仕組みでこれらの病気に関与するかについては、いまだ不明な点も多いのが実状です。
新説「歯周病菌が腸に入って悪さをする」
これまでは「歯周病菌が全身に運ばれて悪さをする説」と「歯周病の“炎症”によって発生した物質が全身に悪さをする説」が有力とされていました。
この2つの説にくわえ、近年は新たに「歯周病菌が腸に入って悪さをする説」が注目されはじめています。
腸のバリア機能が弱まると、肥満や糖尿病、動脈硬化、関節リウマチ、脂肪肝などのリスクが高まることが知られています。
これらの病気はいずれも歯周病との関連が指摘されていることから、腸の環境の変化が間に入って全身の健康に悪影響を与える可能性が示されているのです。
次回は大腸がんとの関係、腸活についてご紹介いたします。