削らずに歯を健康に戻す「再石灰化」の秘密
「むし歯は削って治すもの」と思われがちですが、実は初期のCO(シーオー)の段階であれば、削らずに元の状態に戻せる可能性があります。そのカギを握るのは、私たちの体に備わった「再石灰化(さいせっかいか)」という歯の修復機能です。
今回は、むし歯ができるメカニズムや再石灰化の働き、さらにむし歯予防のヒントについてご紹介しましょう。
むし歯はどうやってできる?「脱灰」のメカニズム
私たちが食事をすると、お口の中の細菌は食べ物に含まれる糖を利用して「酸」を作り出します。
歯を覆うエナメル質は水晶ほどの硬さがあるものの、酸には弱く、長時間さらされると表面のミネラル成分(カルシウムやリン)が溶けだします。これが「脱灰(だっかい)」と呼ばれる現象です。
ざらつき、白濁が最初のサイン
脱灰が進むと歯からは大切なミネラルが失われ、表面がざらついたり白く濁ったりします。これが「初期むし歯(CO:シーオー)」、いわゆる“むし歯のはじまり”にあたります。
初期むし歯の段階ではまだ目立った穴があいておらず、「痛い」「しみる」といったむし歯特有の症状もありません。
しかし、ここからさらに脱灰が進むと、ミネラル成分がどんどん溶けて歯に穴があき、本格的なむし歯へと発展していきます。
歯の自然治癒力「再石灰化」とは?
お口の中では食事のたびに「脱灰」が起こっていますが、すぐにむし歯ができるわけではありません。なぜなら、私たちの体には「再石灰化(さいせっかいか)」という、歯を修復する自然な力が備わっているからです。
唾液が初期むし歯を自然に治す重要なカギ
「再石灰化」とは、脱灰によって一度溶けだしたミネラル成分が唾液などの働きによって再び取り込まれ、エナメル質を修復する働きのこと。
食後のお口の中は細菌がつくる酸によって酸性になりますが、しばらくすると唾液の作用によって中性に戻ります。この際、唾液中に含まれるカルシウムイオンやリン酸イオンが溶けだした歯質を修復していきます。
つまり、再石灰化という現象こそが、初期のむし歯を自然の力で治すカギになるのです。
脱灰vs再石灰化、むし歯を左右するのは「生活習慣」
私たちのお口の中では、食事や間食のたびに「脱灰」と「再石灰化」が何度も繰り返されており、この2つのバランスが保たれることで歯の健康が維持されます。しかし、両者のバランスが崩れて「脱灰」が優位になると、再石灰化の働きが追いつかず、むし歯を発生させてしまうわけです。
間食、寝る前の飲食は要注意
「間食が多い」「スポーツドリンクや炭酸飲料を頻繁に飲む」「食事の時間が不規則」といった習慣は、お口の中を常に酸性の状態にしてしまいます。その状態が長く続くと脱灰が急速に進み、再石灰化の機会が失われていきます。
さらに、「寝る前の飲食」や「歯磨きをせずに寝てしまう習慣」も要注意です。こうした習慣の積み重ねが、むし歯の発症や進行を加速させる要因になります。
次回は歯を守る力を引き出す5つの習慣をご紹介いたします。