むし歯や歯周病は、今もなお歯を失う原因の約7割近くを占めていますが、この割合は年々減少傾向にあります。その一方で、これら2大疾患に変わって近年増加しているのが「歯の破折(はせつ)」です。
破折は現在、むし歯・歯周病に次ぐ抜歯原因の第3位に名を連ねています。
今回は歯の破折の原因や症状、大切な歯を守るための対策についてご紹介しましょう。
歯の破折とは? その原因と抜歯のリスク
歯の破折とは、何らかの衝撃で歯が割れる・折れる・ヒビ割れすることの総称です。転倒や事故、スポーツなどで歯を強くぶつけた際に起こりやすいほか、硬いものを噛んだ時に突然割れたり欠けたりすることもあります。
歯の破折は、割れやヒビの位置によって「歯冠(しかん)破折」と「歯根破折」の大きく2つに分類されます。
歯冠破折
歯ぐきより上の見える部分(歯冠)が割れたり欠けたりする状態で、比較的発見が早く、多くの場合は適切な治療によって歯を残すことが可能です。
歯根破折
歯ぐきの中の根っこが割れたりヒビが入ったりする状態で、目で見て確認することが難しく、発見が遅れやすいという特徴があります。また、割れ方や割れた位置によっては歯を残すのが難しく、抜歯になってしまうケースが少なくありません。とくに、歯が縦に割れていたり、根っこが完全に分かれてしまったりした場合は、保存が難しくなります。
見逃さないで! 破折を疑う4つの症状
歯冠破折は「歯の一部が欠ける」など目で見てわかりやすく、さらに「噛み合わせの違和感」など自覚症状を感じやすいのが特徴です。しかし、歯根破折は歯ぐきの中で起こるため、気づかないうちに症状が進行してしまうケースも多くみられます。早期発見・早期治療が歯を守る重要なポイントとなるため、以下の症状が気になったら、早めに歯科医院で相談しましょう。
01噛むと痛い
歯根破折では、「噛んだ時だけ痛みを感じ、噛み終わると痛みが引く」という症状をともなうことがあります。これは、噛む力が加わった際に破折した部分がずれることで痛みが生じるためです。さらに症状が悪化すると、「何もしていなくてもズキズキ痛む」などの症状があらわれます。
02噛んだ時に「パキッ」と音がした
硬いものを噛んだ時などに「パキッ」という音とともに違和感を覚えた場合は、歯が破折した可能性があります。音がした直後は痛みを感じないこともありますが、このような異常を感じたら放置せず、早めに受診することをおすすめします。
03歯ぐきの一部が腫れている
割れた部分から細菌が入り込んで炎症を起こすと、その部分の歯ぐきが腫れていきます。歯ぐきの腫れは歯周病でもよくみられる症状ですが、特定の歯の周りだけ腫れている場合は破折の可能性が高くなります。
04歯がグラグラ動く
これまで安定していた歯が、突然動くようになった場合も注意が必要です。これは歯根破折によくみられる症状で、放置すると症状が進行し、歯が残せなくなる可能性があります。わずかな動きでも放置せず、早めに歯科医院で診てもらいましょう。
次回は破折リスクの要因と予防策についてご紹介いたします。