歯を1本失っても「そこまで問題ないのでは?」と思う方も多いのではないでしょうか。確かに、私たちは20本以上の歯があれば、ほとんどの食品を不自由なく食べることができます。しかし、たった1本の歯を失ったことがきっかけで、お口全体の健康が損なわれ、それが全身の健康にも影響を及ぼしてしまう可能性があります。
今回は、1本の歯の喪失からはじまる「欠損ドミノ」のメカニズムとその影響について、詳しく解説していきましょう。
こんな症状が気になりだしたら「歯周病」かも?
私たちのお口には親知らずを含め32本の永久歯がありますが、年齢とともにその数は徐々に減少していく傾向にあります。
令和4年(2022年)の厚生労働省の調査によると、45~49歳では約98%の人が自分の歯を20本以上保っています。しかし、70~74歳ではその割合が約70%、さらに85歳以上になると約40%にまで下がります。
この統計が示すように、私たちの歯は加齢とともに失うリスクが高まるため、若い時期から適切なケアと予防策を講じることが大切です。
(参考)・令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要
1本の歯からはじまる「歯の欠損ドミノ」
「歯の欠損ドミノ」という言葉をご存じでしょうか。これは、最初に1本の歯を失うことをきっかけに、ドミノ倒しのようにお口の環境が悪化し、さらにその影響が全身の健康にまで及ぶ悪循環のことを示します。その欠損ドミノは、次のようなステージを経て進行していくのが特徴です。
ステージ1 1本の歯を失う
最初に失われやすいのは、噛む力が集中しやすい奥歯(第一大臼歯)です。
この段階では、主に部分入れ歯やブリッジといった治療が選択されます。しかし、これがのちに残っている歯に負担をかける要因となり、さらなる問題を引き起こすもととなってしまいます。
ステージ2 複数の歯を失う
1本の歯を失ったことで噛み合わせのバランスが崩れ、やがて周囲の歯にもダメージが及びます。
部分入れ歯やブリッジでは装置を支える歯に大きな負担がかかり、これらの歯が徐々に失われていく傾向にあります。
ステージ3 多くの歯を失う
最初は1本だったものが、2本、3本と失われていくにつれ、噛み合わせにも大きな乱れが生じていきます。
これにより、お口の環境がさらに悪化し、残された歯にも次々と問題が生じて多くの歯が失われていきます。
次回は歯を失うで起こる日常の変化や影響、そして予防についてご紹介いたします。